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「ワンコインの居場所 心育む」

南国の陽光が心地よい3月下旬、学校を終えた児童や生徒が三々五々那覇市の教室にやってくる。カウンターやテーブルを配置した空間はカフェの様。
小学校4年生の男子は、宿題の小数の計算プリントに集中。中学3年生の女子は、もうすぐ進学する高校の英語の教科書と向合っている。
彼らを見守っているこの教室の経営者は那覇市の学習塾の共同経営者だったが、学習環境に恵まれない子供たちの居場所づくりのため非営利事業を立ち上げた。

塾通えぬ子増加
平日と日曜は午後4時から同9時、土曜は午前10時から午後6時まで。子どもたちは好きな時に教師うを訪ね学習や読書をして過ごす。

宿題などで分からない点は質問できる。
入会金や月謝は徴収せず何時間いても利用料は1日500円。

「将来なりたい自分を想像し、学習計画を立て実行してみよう」と子どもたちに声をかける。
教室では彼らが質問したときに手を差し伸べる。大切なのは大人がそばにいて見守ること。
役割は「自己学習の伴走者」と心得ているとの事。

なぜこのような取り組みを始めたのかというと、沖縄で生まれ育ち、大学卒業後会社勤めの傍ら、地域おこしや人材育成のNPOに参加。2009年に仲間と学習塾を立ち上げたが、家族の事情で塾への入会を諦める子どもが年々増えていることに気付いたという。

沖縄県では離婚率が全国でも最も高く、県の調査ではひとり親世帯が全国の6%(2009年1月時点)に上る。那覇市が昨年実施した調査では「下校時に誰もいない時が多い」と答えた小学生が31%いた。
一方、全国学力テスト(小学校)の正答率で同県は最下位が続く。
大学進学率も全国平均を大きく下回る。
離婚率と子どもの学力の相関は必ずしも明らかではないが「経済的理由で学習塾に通えない子どもたちの学習環境に問題があるのではないか」との思いを強くしたという。

沖縄では図書館や児童館など公的施設は午後6時閉館が多く、地域では放課後学習できる場所が少ない。「ファーストフード店で勉強する子どももいるが、お金がかかる」子どもが安心して気兼ねなく学べる場所を自分で作ろうと思い立ったとの事。


雑談や演奏も
頃合いを見計らい子どもたちに「お茶にしよう」と声をかける。
漫画の話で雑談したり、ピアノや三線を演奏したりして、ひととき気笑い合う。何気ない対話の中にこそやる気や自己肯定感を育むヒントがある。

沖縄には「肝心(ちむぐくる)」という方言があります。
「思いやりや真心のある」の意味で沖縄の人に脈打つ美質を伝える大切な言葉です。
この方言のようにまさしく素晴らしい志のある事業だと思います。